浜松AGAクリニック院長の佐々木です。
今回は「赤色のLEDライト」を頭皮に照射することで行う発毛治療について解説していきます。
この治療は導入しているクリニックも少なく、よく知らない方も多いと思いますが、発毛治療として有用性を示す十分な根拠があり、副作用も軽微であることから、日本皮膚科学会からも推奨されているものになります。
薬の使用に抵抗があるために、今まで「発毛する根拠のある治療」に取り組めていなかった方には是非おすすめしたい治療ですので、以下読んでいただいた上で治療の検討をしてみてください。
●LEDとは
LEDと聞いてまず思い浮かぶのは電球や照明ではないでしょうか。実際に皆さんの身の回りのものでも、パソコンやスマートフォン、信号機、イルミネーションなどに使用されています。これだけLEDが広く普及した理由には「消費電力の少なさ」「ライトの寿命の長さ」などが挙げられます。
そんな私たちの生活に必要不可欠となってきたLEDですが、1990年代にNASA(アメリカ宇宙開発局)によりLED照射による植物の成長促進が観察されて以来、人体に対する影響について研究が重ねられてきました。そして今LED照射は、発毛医療をはじめとする美容医療業界で注目を集めています。
美容医療業界で使用されているLEDは「赤色LED」「青色LED」「白色LED」の3種類であり、この中で発毛医療に使われているのは「赤色LED」です。LEDのような光線は、その波長の長さによって私たちに見える色が変わり、また皮膚に当てた時の到達深度が変わるので、これら3種類は皮膚に対してそれぞれ異なる作用をもたらします。
●青色LEDと白色LED
青色LEDと白色LEDは、当院で行なっている発毛治療としての使用には適していませんが、皮膚に照射することでそれぞれ有益な効果を出すことができます。
青色LEDは3種類の中で最も波長が短く、皮膚の表層をターゲットとして、主にニキビ治療に用いられます。ニキビは皮脂の過剰分泌などが原因で、毛穴に存在する「アクネ菌」が繁殖することが原因で生じます。アクネ菌は繁殖していく中で「ポルフィリン」という物質を産生しているのですが、青色LEDはこのポルフィリンに反応して「活性酸素」を発生させます。この活性酸素にはアクネ菌を殺す作用があり、これによって今あるニキビを改善させたり、そもそもニキビをできにくくすることが期待できます。
白色LEDは3種類の中で最も波長が長く、真皮層や更にその奥の筋肉層をターゲットとします。筋肉層までターゲットにできることで、肌の奥の筋繊維を太くし、しわやたるみの改善といったアンチエイジング効果をもたらすことが期待できます。
●赤色LEDと発毛
赤色LEDは3種類の中だと波長の長さは真ん中になりますが、可視光線(目で確認することができる光)の中だと最も波長が長い分類になります。そのため、赤色LEDは皮膚表層から約3〜5mmという深い部分に存在する「毛乳頭」と呼ばれる組織に効果を及ぼすことができます。
毛が生えていくためには、「毛母細胞」と呼ばれる毛の元となる細胞が分裂・増殖を繰り返すことが必要であり、「毛乳頭」は「毛母細胞」が活発に働くように多様な「成長因子」を与えるという作用があります。これより、頭皮に赤色LEDを照射することで毛乳頭を活性化させ、毛母細胞に成長因子を多く与え、発毛を促進することができます。研究結果としても、赤色LED照射によって毛根部分でHGF、Leptin、VEGFという成長因子が確かに増加することが明らかとなっています。
(これらの成長因子には、毛が生えては抜けてを繰り返すサイクル=ヘアサイクルにおける、毛が太く長く成長する期間である「成長期」を長く維持していくという働きがあります。これによって軟毛化していた毛を太くし、相対的に抜け毛を減らすことができます。)
またこれらの効果により実際どれくらい毛量が増えるかという研究もなされており、男性型脱毛症に対して5件、女性型脱毛症に対して3件の信頼性の高い研究があります。
110名の男性型脱毛症の方に対して行われた研究では、26週間の観察期間で毛髪数が19.8本/cm2増加し、122名の女性型脱毛症の方に対して行われた研究では、26週間の観察期間で毛髪数が20.2本/cm2増加しました。(共に、コントロール群=治療を行わなかった方達と比較して有意な増加です)
1cm2あたり何本の毛が増えたという説明ではイメージが付きにくいかもしれませんが、この結果はデュタステリドやミノキシジルといった薬の効果と同等のものになります。
これらの研究で示唆された副作用は、乾燥、痒み、ひりつき、温熱感など比較的軽微なものであることから、赤色LED照射による発毛治療はリスクベネフィットの観点からも有益であることは間違いないと言えます。
●赤色LED照射の注意事項
ここまでの説明で、赤色LED照射が発毛治療において有益であるということはお伝えできたと思うので、ここからは治療に際しての注意事項を説明していきます。
当然のことながら治療を行う上では適切な方法というものがあり、適当に赤色LEDを照射するということではいけません。皆さんが普段服用しているお薬にも「用法」と「用量」が定められており、例えば発熱した際も解熱剤を適切な頻度と量で服用するから意味があるのであって、それらが足りなければ効果は出ないし、過剰であれば薬は毒になります。これと同様に、赤色LED照射についても適切な「照射頻度」「照射時間」があり、それに加えて適切な「機器の選択」をする必要があります。
適切な照射頻度は週1〜3回です。先述した研究結果は週3回の照射によるデータが多いですが、週1〜3回の照射でも10名中2名がほぼ治癒、7名が著効、1名が有効であるという研究結果もあり、現状週1〜3回の照射が適切と言えます。
適切な照射時間は1回の治療あたり20分間です。これは多くの研究で照射時間20分間で効果があると認められているからに過ぎず、LED機器の出力やLED機器と頭皮の距離などによって変わりうるものだと考えられます。しかし、現状研究結果として効果を認められているのが「20分間」ですので、1回あたり20分間の照射をすることが望ましいでしょう。
適切な機器の選択とはどういうことかというと、赤色LEDを発する機器だからといってどんなものでも有効とは限らないということです。極端な例を挙げますと、赤色LEDライトが10個しか付いていない機器と1000個付いている機器では当然効果が変わるということです。また赤色LEDの中でも超狭域帯(半値幅10nm以下)と呼ばれるレーザーに近い性質を持った光線でなければ効果を認められていません。自分が治療しようと思っている赤色LED機器は本当にこれらの条件を満たすものなのかどうかを確認することも必要なことと言えるでしょう。
●まとめ
このように副作用が軽微であり、治療効果の認められている発毛治療はまだ多くありません。そのためもっと広く普及していくべき治療法ですが、適切な治療方法を適切な機器を用いて行える医療機関は限られています。その理由としては、発毛を専門とする医師の少なさや、LED機器が高額であることが挙げられます。
当院では一人でも多くの薄毛・抜け毛に悩む方に「根拠のある発毛治療」を提供したいと思い、2021年8月下旬を目処に赤色LED機器の導入を決定しました。導入する機器は「N-LED5000DK」という信頼性の高い機器であり、大学病院などでも導入が検討されているものになります。
また当院では週1〜3回、20分/回の照射を行い、その上で月に1回院長による頭髪診断・頭髪写真撮影・診療をすることで、治療効果を確認していきます。この治療は内服薬や外用薬との併用が可能ですので、ミノキシジルやフィナステリド、デュタステリドなどと組み合わせた治療も積極的に検討します。
赤色LED照射による発毛治療は、お薬による治療に抵抗がある方や、男性と比べて治療効果を出すことが難しい女性の方、ご年齢や持病により薬の服用が難しい方にとっては、非常に良い適応となります。
治療に興味がある方や、ご相談をしたいという方は、是非一度当院の無料カウンセリングにお越しください。
※当記事執筆者(浜松AGAクリニック院長 佐々木 宥典)については以下ご参照ください。
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